日の名残り
リバプール国立美術館が誇るラファエル前派の傑作の数々が来日するということで
楽しみにしていた『英国の夢 ラファエル前派展』に行ってきました。ジョン・エヴァレット・ミレイの≪春(林檎の花咲く頃)≫は特に楽しみにしていた作品のひとつ。美しい景色の中にたたずむ少女たちの穏やかさと希望とは裏腹に描かれる不吉さを感じさせる大鎌。儚い運命の象徴として描かれているのだそうです。文学的で緻密な仕上がりに思わずうっとりしてしまいました。全体的に色彩が豊かで明るい作品が多く、ロマンチックな雰囲気が漂う空間でした。 また1月にはロシアが誇る名門ワガノワ・バレエ・アカデミーの日本公演『くるみ割り人形』を見てきました。チャイコフスキーの美しい音楽とともに繰り広げられるスモーキーパステルな世界観の中で踊る未来のバレリーナたち。フレッシュで初々しく、天使のようでありながらも、安定した正確な技術と表現力はお見事でため息しかでませんでした。さすが世界最高峰。第二幕のコーラスに合わせて舞う雪の精たちの群舞は幻想的で素敵だったな~♡そして最近の読書の時間には、『わたしを離さないで』の著者カズオ・イシグロの本、『日の名残り』を読んでいました。ダウントンアビー好きな方かなりおすすめです♪
アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンで実写化された映画を見て気になり原作を購入。原作にほぼほぼ忠実に作られていたのですね。
イギリス貴族のお屋敷で執事として働く中年男性のスティーブンスが主人公。執事としての使命に全うし、人生のすべてを捧げ、そしてそれを誇りに思って生きてきたスティーブンスですが、とあることをきっかけに休暇が与えられ、旅へ出かけることに・・・。旅の途中にはかつて最高の輝きを放っていたダーリントンホールでの出来事を振り返ります。亡きダーリントン卿への忠誠心や、邸内で開かれた数々の外交会議、そして女中への淡い想いや、父親の死・・・
栄光の日々とともに自分の人生に対する後悔も次々と浮かび上がります。
夕暮れが一番いい時間なんだ。旅先で知り合った人にそう言われた時に、人生も終盤に差し掛かったスティーブンスは夕暮れと自分の今の現状とを重ね合わせて、涙を流しながらも自分の過去を受け入れます。また哀愁漂いながらも前向きに終わるラストも微笑ましく秀逸な終わり方でした。『日の名残り』味わい深く上質な作品です。
情景描写が美しくイギリスの田園風景が目に浮かぶようで、ところどころに知的なユーモアが散りばめられているのも魅力的な作品です。